◇記者コラム「Free Talking」
高校生の弟が来春のセンバツ高校野球大会出場を当確にし、その翌日に大学生の兄が明治神宮大会出場を決める。そんな夢のような話を現実にした兄弟がいる。中部学院大の冷水(しみず)秀輔投手(2年・耐久)と和歌山・耐久高の冷水孝輔投手(2年)だ。
10月29日、秋季高校野球近畿大会準々決勝。耐久高は須磨翔風高に勝利し、4強入り。エース右腕の弟・孝輔はこの試合で1失点完投。創立170年超の伝統校初の甲子園出場を有力とした。
その翌日は東海地区・北陸・愛知3大学野球連盟王座決定戦の最終日。中部学院大は名城大を破り、神宮への切符を手にした。兄・秀輔は7回2死から2番手で登板し、2イニング1/3を完全投球。最優秀選手賞に輝いた。
「あまり、けんかしたことがない」と秀輔が語る仲良し兄弟。小学校のグラウンドでよくキャッチボールをした。秀輔は、弟の近畿大会の映像は必ず見ていたという。「自分も変化球のアドバイスをもらったりして、アドバイスを交換している」と明かし「良い意味で、一番近いライバル」。戦う舞台は違えど、ともに高め合ってきた。
秀輔も高校時代は耐久高でエース。和歌山県大会では秋、春、夏全てで8強入りした。それでも「弟の方が全然すごい。変化球のコントロールもいいし、球数を投げても、投げきれる体力がある。僕が高校の時にはできなかったこと」とべた褒めした。
もし孝輔が中部学院大に進学すれば、秀輔が4年生で孝輔が1年生。1年間だけだが、ともに神宮を目指すことができる。しかし、秀輔は「追っかけてくるなと言ってるんですよ」と笑う。「自分の道をしっかり進んでほしい」。ここでも弟のことを思う兄の優しさに触れた気がした。
耐久高は近畿大会準決勝で敗れ、「兄弟そろっての神宮」はかなわず。秀輔は15日の明治神宮大会初戦・日体大戦で2/3イニングを1失点。試合にも敗れた。それでも、スタンドで観戦した弟には神宮で投げる兄がまぶしく映ったはずだ。次は来春のセンバツ大会。耐久高の冷水孝輔に注目したい。(アマ野球担当・後藤正樹)
2023-11-20T02:43:23Z dg43tfdfdgfd