大谷選手の奇妙な金銭的判断、元通訳の賭博疑惑で脚光

米大リーグ(MLB)で活躍する大谷翔平選手がスポーツ賭博への関与を否定したことを受け、残る疑問の中で最も差し迫ったものはこれだろう。「銀行口座から数百万ドルが消えたことに気づかないなんて、あり得るのか」

長年の通訳であり親友であった水原一平氏が、連邦当局の捜査対象となっている違法なブックメーカー(賭け業者)に多額の借金を重ねていたことが発覚した後、25日に初めて公の場でこの件について語った大谷選手は、自分が被害者であると主張した。また、水原氏を「窃盗と詐欺」で告発し、かつては信頼していた友人が自分の口座からお金を盗み、ギャンブル依存症についてうそをついたと語った。

この説明だと、水原氏は大谷選手の個人資金に自由にアクセスでき、大谷選手に知られずに長期間にわたって大金を振り込めたということになる。

それは理解しがたいことかもしれないが、大谷選手が表舞台に出てきてからずっと見せてきた、ある定評のある奇抜さが、多くの点で完全に一致している。すなわち、お金との関わり方が極めて独特なのだ。

昨年12月にスポーツ史上最高額の契約にサインしたロサンゼルス・ドジャースのスーパースターである大谷選手は、奇妙な、そして時には全く不可解な金銭的判断を、ほとんど何の説明もなしに下してきた長い実績がある。10年以上前に日本で始まったプロ野球選手としてのキャリアのどの段階でも、大谷選手はそれまでの常識を覆し、自らの富について奇妙なほど無関心であるように見えた。

北海道日本ハムファイターズに在籍していた際、大谷選手はすでに数億円の年俸を手にしていたが、本来は新人選手が利用する球団寮に住んでいた。大谷選手の希望で、その収入は両親が管理し、毎月10万円の小遣いが支給されていた。

この質素な生活スタイルはすぐに大谷選手の伝説の一部となり、物欲が一切なく、投球と打撃にひたすら集中する禁欲的な野球ロボットのイメージを作り上げた。

それ以降、大谷選手が何をしてもその認識は変わらない。日本で5シーズン活躍した後、大谷選手は長らく不可能と思われていたことを成し遂げようとした。MLBで投手と打者の二刀流をこなすという、それまでほとんど試みられなかった偉業である。ベーブ・ルースでさえ、天才的なバッティングに専念するためにすぐにマウンドを降りた。

大谷選手がMLBへの移籍を選択したタイミングは、彼を突き動かしたものが何であったかを物語っている。それがお金ではなかったことは確かだ。野球のルールでは、25歳以上の日本人選手は事実上フリーエージェント(FA)として扱われる。つまり大谷選手は、球団側に支払う意思があれば、どんな金額の契約でも結ぶことができたということだ。彼の比類なき能力を考えれば、その額は2億ドル(約300億円)にも上ったかもしれない。

だが大谷選手は、まだ23歳だった2018年シーズンの前にMLBに飛び込むことを決めた。その結果、各球団が彼に支払うことができたのは最大でも約350万ドルだった。通常は中南米の10代選手向けで、契約金の上限が定められた「インターナショナル・ボーナス・プール」の対象となったからだ。大谷選手は、230万ドルのボーナスを提供できるロサンゼルス・エンゼルスを選んだ。

その後の3シーズン、大谷選手はMLBの最低保証年俸に近い金額でプレーした。2021年に2年間850万ドルの契約延長で合意したときにようやく、年俸が7桁に乗った。そのシーズン、現在までに2度受賞しているMVPのうちの一つを獲得し、人気も市場価値も最も高いMLB選手としての地位を確立した。結局、早く渡米したかったがために、天文学的な額のお金をテーブルの上に置き去りにしたのだ。

大谷選手は2017年、日本での記者会見でメジャー挑戦を正式表明した際、「自分としてはまだまだ足りない部分の方が多い選手だと思っているので、自分をもっと磨きたいというか、そういう環境に自分を置きたいと思っている」と語った。「高校を卒業したときも本当にそういう気持ちで(中略)自分を磨いたときにどうなるのかなということに対して自分自身として興味があった部分の方が強い」。

このオフ、大谷選手はついに本当に「換金」するチャンスを得た。初めてFAとなったのだ。エンゼルスでは6シーズンを過ごし、個人的には多くの成功を収めたが、プレーオフ出場はゼロだった。彼はオープン市場で最も注目され、史上最高額の契約記録を塗り替えるに違いないと思われていた。

大谷選手新契約のニュースがついに流れたとき、その金額は当初、最も荒唐無稽な予想をも上回り、アナハイムからロサンゼルスまで州間高速道路5号線を小旅行するために10年で7億ドルが支払われるというものだった。だが、この契約は一癖あることが明らかになった。大谷選手は年俸の大部分を繰り延べ、契約満了後まで受け取れないようにしたのだ。

ドジャースでの10年間、大谷選手の年俸はわずか200万ドルで、残りは2034年から2043年まで、毎年7月1日に6800万ドルずつ無利子で支払われる。つまりインフレを考慮すると、契約金の現在価値は7億ドルを大幅に下回ることになる。MLB選手会は、大谷選手の契約金の実際の価値を約4億3700万ドルとはじきだした。これは歴史的に見て巨額であることに変わりはないが、最終的には予想されていた額よりも少なかった。

大谷選手の代理人で、米大手代理人グループ「クリエーティブ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)」に所属するネズ・バレロ氏は、この異例の契約形態は大谷選手のアイデアだと語った。大谷選手は、これだけの金額を繰り延べることで「ドジャースがより良い選手と契約し、より良いチームを作れるようになる」と述べた。

いずれにせよ、大谷選手がお金に困っているということではない。彼は日本と米国の両方でエンドースメント(スポンサー契約)から数千万ドルを稼いでおり、仮にドジャースから年俸を受け取らなかったとしても、2024年には野球選手として最高年収を上げるだろう。

それにしてもスポーツ選手は、お金のことは気にしないとよく言う。大谷選手はそれが本当のように見える稀有(けう)な存在だ。本人が気づかないうちにお金の一部が消えてしまうこともあるほどに。

2024-03-29T01:46:31Z dg43tfdfdgfd