韓国悪夢の五輪消滅「インドネシアが90分で勝利でも…」ブラジル人記者が見る“アジア新勢力図”「イラク戦はU-23日本が優位」の根拠は?

日本代表やJリーグといったフットボールについて、日本通のチアゴ・ボンテンポ記者に“お世辞抜き”で論評してもらうシリーズ。今回はU-23アジアカップのヤマ場だったカタール戦と、勝てば五輪出場のイラク戦展望、そして韓国がインドネシア相手に敗北を喫するなどアジア勢力図の変貌についても語ってもらった。(全2回/第1回も)

 グループステージ(GS)最終節で日本を倒してB組を首位で突破した韓国が、準々決勝で格下と思われていたインドネシア(A組2位。A代表のFIFAランキングは134位)の前に散った。日本も、カタールを退けて喜んでいるわけにはいかない。本当の勝負はここからだ。

“韓国衝撃の敗退”をブラジル人記者はどう見たか

 日本の多くのファンが“一寸先は闇”の思いを強くしたであろう――準々決勝の韓国対インドネシア戦について簡単に振り返ろう。

 前半8分に韓国がミドルシュートで先制したと思ったら、VARが介入。直前にオフサイドがあったと判断され、ゴールが取り消された。その後、インドネシアがオランダ・デンハーグ所属のFWラファエル・ストライク(21)の見事なミドルシュートで先制する。

 45分、韓国は右からのクロスを頭で折り返したところ、インドネシアDFに当たってコースが変わり、ゴールに吸い込まれるという幸運な得点で追いつく。しかし、前半アディショナルタイムにインドネシアがカウンターからストライクが再び決めて勝ち越す。後半25分、韓国はこの大会3得点のFWイ・ヨンジュン(20)がインドネシア選手を踏みつけて退場処分。それでも後半38分、何とか追いついて試合は延長へ。

 勝負はPK戦にもつれ込み、互いに最初の5人ずつが決めた後、6人目は共に失敗。その後、また5人ずつ決めたが、12人目で韓国が失敗し、インドネシアが決めて勝ち上がる――という何ともドラマチックな試合だった。

 この一戦も、日本滞在中のチアゴ・ボンテンポ記者はチェックしていた。アジア勢力図について感じるところを、日本が五輪出場権を懸けるイラク戦の展望とともに聞いていく。

海外組が6人、ハブナーはセレッソにいるよね

――韓国の敗退は意外でしたか?

「決定機の数は、インドネシアの方が多かった。韓国が悪かったというより、インドネシアが強かった。インドネシアが90分で勝利を収めていてもおかしくなかった」

――インドネシアは、今年開催されたアジアカップのGSで日本と同組。イラクに1-3で敗れ、ベトナムに1-0で勝ったものの日本に1-3で敗れ、GS3位で敗退した。ただ、今回のU-23代表にはアジアカップに出場した選手が7人もいました。

「A代表に選ばれた経験を持つ選手が9人いて、A代表とあまり遜色がないチーム。GKエルナンド・アリ(22)、そして右ウイングのウィタン・スアレマン(22)、CFストライク、左ウイングでベルギーのデインズに所属するマルセリーノ・フェルディナン(19)の4人は、すでにAチームでも主力として活躍している」

――外国のクラブでプレーする選手も多いですね。

「日本は5人だけど、インドネシアは6人(注:国別の内訳は、日本がドイツ2人、ベルギー2人、ポルトガル1人。インドネシアがオランダ3人、日本、ベルギー、韓国が各1人)。20歳のCBジャスティン・ハブナーは、セレッソ大阪でプレーしている」

韓国に敗戦→カタールと対戦は幸運だったかも

――インドネシアはかつてオランダの植民地だったから、オランダにかなりの数のインドネシア人が住んでいる。このチームでも、ハブナーら4人がオランダ生まれです。

「彼らの多くはオランダとのダブルルーツで、大柄で屈強な選手が多い。インドネシア協会が彼らを発掘して、年齢別を含む代表へ招聘する下地を整えたんだね。また、インドネシア生まれでもフィジカル能力が高い選手が多く、技術レベルも高い。国内の選手育成が成功している証拠だ」

――ということは、日本がGS最終戦で韓国に負けて対戦相手がカタールになったのは、実は幸運だったのかもしれません。

「そういうことだね。インドネシアは、韓国選手の強い当たりに全くひるむことなく、多くの決定機を創り出していた。もちろん、後半、韓国が退場者を出して数的優位に立ったことが有利に働いたのは確かだけどね」

イラク戦のスタメンを予想すると?

――それでは、準決勝で日本が対戦するイラクについて。

「アジアカップのGSで、日本が1-2で敗れたのは記憶に新しい。身体能力が高く、なかなか狡猾で、日本は非常に苦しめられた。主なフォーメーションは、4-4-2。2トップの一角のFWアリ・ジャシム(20)はA代表でも主力で、今大会で3得点をあげている。CBザイド・タシー(23)は身長193cmあり、彼もA代表のレギュラーだ」

――彼らは、GSでは緒戦でタイに敗れたものの、タジキスタンを4-2、サウジアラビアを2-1で倒し、準々決勝でもベトナムを1-0で退けています。日本の先発メンバーをどう予想しますか?

「今度は中3日の試合だし、基本的にはカタール戦と同じだと思う。唯一、変更があるとしたら左ウイングで佐藤ではなく平河を起用するんじゃないかな」

――日本に期待することは?

「守備陣は、高井幸大(川崎フロンターレ)、木村を中心に安定している。ただし、セットプレーからの失点は何が何でも防ぎたい。藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン=ベルギー)、松木玖生(FC東京)らの中盤は、攻守に貢献していて頼もしい。攻撃陣では、山田の精巧な左足に期待したいし、アタッカーたちに点を取ってもらいたい」

細谷はもちろん藤尾、平河、佐藤にも期待したい

――準々決勝で大会初得点をあげた細谷真大は、この試合でも活躍するでしょうか?

「彼が点を取ったのは、本人にとってもチームにとっても非常に重要だった。とはいえ、彼をはじめとするアタッカーたちが決定機を確実に決めてくれていたら、日本はすべての試合でもっと簡単に勝てていた。皆、能力は高い。細谷にも、カタール戦でミスをした藤尾にも、やはりまだ得点のない平河、佐藤にも期待をしている」

――GS中国戦で退場処分を受けた西尾の出場停止が解けました。彼の使い方は?

「大岩監督は、CBに関してはこれまで通り高井、木村、鈴木海音(ジュビロ磐田)で回すんじゃないかな。西尾は最後のオプションになると思う」

――日本の勝算は?

「日本は、準々決勝で25日、それも最初に試合をした。逆に、イラクは26日の準々決勝最後の試合であり、日本の方が1日余り休養時間は長い。しかも、日本はこれまでの試合で選手のローテーションを行なってきたけれど、イラクは先発メンバーをあまり変えていない。疲労が蓄積している選手が多いはずで、日本はフィジカルコンディションで優位にある。序盤に先制点を奪い、その後は試合をしっかりコントロールして、自分たちのペースで試合を進めたい。厳しい試合になるのは間違いないけれど、十分に勝てると思うよ」

VARは…西尾が教訓を示してくれたから大丈夫

――準々決勝では、4試合すべてで退場者が1人ずつ出ました。このうち、VARで退場に至ったのが3人。そして、退場者を出したチームがすべて負けています。

「これまでなら見過ごされていたはずのラフプレーが、VARによって厳しく処罰され、試合の内容と結果を大きく左右している。だからこそ、日本は絶対に退場者を出してはならない。日本の選手はクレバーで、感情のコントロールができる。それに、GS中国戦で西尾が身をもって貴重な教訓を示してくれたから、大丈夫だと思うけどね(笑)」

 準々決勝までの4試合で、日本が持てる力を存分に発揮して快勝した試合は一つもない。この大会で最も重要な試合となる準決勝で最高の試合をして、堂々とパリ行きを決めてもらいたい。

<第1回からつづく>

2024-04-29T08:14:13Z dg43tfdfdgfd