大谷翔平の妻「一般席観戦で危険じゃないの?」実は“ひっそり厳戒態勢”だった…ある騒動からドジャース逆転まで「現地で目撃」韓国開幕戦ウラ側―2024上半期 BEST5

2023ー24年の期間内(対象:2023年12月~2024年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。大谷翔平部門の第3位は、こちら!(初公開日 2024年3月21日/肩書などはすべて当時)。

 その歴史的な一日は、物騒な「爆破予告」から始まった。3月20日朝、飛び込んできたのは「ドジャースとパドレスの開幕戦が行われる高尺スカイドームを爆破するとの脅迫状が届いた」という一報だ。現地テレビ局のニュースによると、脅迫メールには「大谷翔平に危害を加える」との一文もあったといい、球場周辺は試合前から物々しい雰囲気に包まれた。

“爆破予告”…不安あった試合前

 特殊部隊や探索犬による捜査、金属探知機、厳重なセキュリティーチェック……。昼過ぎにはMLB側に「危険物は見つからなかった」との報告が届き、予定通りの試合開催が確認されたが、試合前会見では両チームの監督いずれにも「爆破予告」に関する質問が飛んだ。

「不幸なニュースだが、メジャーリーグや野球に対するセキュリティーチームの実力を信じている」とパドレスのマイク・シルト監督。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、韓国到着時の仁川国際空港で“生卵投げつけ騒動”にも遭遇していたが、「(爆破予告も)正直なところ、そこまで気にはしていません」と語った。

 ブラウン&ゴールド、そしてドジャースブルー。日韓米から駆けつけたメジャーリーグファンが座席を埋めていくに従って、ひんやりとした空気は暖まり緊張感が次第にほどけていく。かくして無事、不穏な出来事は何も起きぬまま午後7時5分、熱狂に包まれプレーボールの時は訪れた。

ドジャース家族席に…大谷妻の姿も

 その20分ほど前のこと。ドジャースベンチ上方のスタンドに“春風”が吹きぬけた。2月29日に結婚を発表したばかりの大谷の真美子夫人が姿を現したのだ。声をかけられた日本人ファンに会釈をしながら腰掛けたのは一塁側の一般観客席。ガラス張りのVIPルームでもなければ、悠々とした特別席でもない。ドジャースのチームメートの家族たちと共に席に着き、ユニフォームとキャップを身につけ、大谷の新天地での初陣を見守った。

 迎えた3回の第2打席、見せ場がやってくる。「小さい頃から憧れてきた存在」と話すパドレス先発のダルビッシュ有との対戦で、まずは3球目、ライト外側の天井を直撃する強烈なファウル。2ストライクとなった後、シンカーをライト前に弾き返し、移籍後初ヒットを記録した。さらに続くフリーマンの打席で初球に盗塁も記録。真美子さんは一緒に応援していた大谷の両親らと笑顔でハイタッチを交わすなど、生き生きとした表情で喜びを表していた。

 2点リードで迎えた第5打席の8回1死一、二塁の場面では、7番手の左腕・モレホンの初球を左中間に運び今季初打点を挙げた。満面笑顔の真美子さんは、その後も韓国式の応援や場内演出にノリ良く参加するなど、終始チャーミングな表情を見せ続けていたのだった。

「安全性、大丈夫?」じつは厳戒態勢だった

「爆破予告」もあった中、一般席で大谷の家族が観戦していて大丈夫? そう心配するむきもあったかもしれないが、実は周囲には徹底した警備態勢が敷かれていた。観客席に出入りする直前には、黒ずくめの服装で耳に無線イヤホンをつけたSPらしき男性が周辺を警戒。制服の警察官4名を通路前に配し、韓国人のスタッフはチケットを持っていない人がエリアに近づかないようにガードしつつ、家族席にスマホのカメラを向ける観客には厳しく注意を繰り返していた。幸せに溢れた大谷ファミリーの応援風景の陰には、さりげない、かつ鉄壁の守りがあったというわけだ。

 メジャーリーグでは選手の家族はチームの一員として遠征やキャンプにも帯同することが一般的だが、特にドジャースは伝統的にファミリー気質の球団として知られる。メジャー7年目で伝統球団の一員となった大谷は、試合中も豊かな表情を見せた。

観衆1万5952人、報道陣544人

 ダルビッシュからシーズン初安打、さらに初盗塁まで決めた後、ズボンのお尻のポケットがベロンと外側に飛び出し、審判に指摘されて照れ笑いする場面も。ドジャース移籍後初打点となった第5打席のタイムリーヒット後は、クレイトン・マッカロー一塁コーチとヘルメット同士をゴツンとぶつける挨拶を交わし、ベンチに向かって両手を上げるポーズを見せた。

 5−2と逆転勝ちで開幕から白星発進。

「最初のスタートとして勝てたのがまず良かったですし、最後まで粘り強く、諦めず逆転できたのがチームとして良かったんじゃないかなと思います。やっぱりこうやって終盤で逆転できるのが強いチーム。こういう試合が多ければ自ずと勝ちは増えてくるんじゃないかなと思います」

 明るい表情には、グラウンド内外での充実感が滲み出ていた。

 ダルビッシュが投げ、大谷が笑い、松井裕樹がデビューを飾ったメジャー開幕戦。地元のファンにとっては、韓国で史上初めて行われたMLBの公式戦で、パドレスの韓国人内野手、金河成が凱旋を果たした誇らしい夜にもなった。

 観衆は1万5952人。訪れた報道陣は544人。

 観客を送り出した高尺スカイドームのバックヤードに、笑顔を浮かべながら“解散”する警備員たちの姿があった。大きな体に黒ずくめの服装はSPの面々か。緊張から解き放たれ、ようやく若者らしい表情がのぞく。何事もなかった夜に、ドジャース・大谷翔平の第一歩は鮮やかに刻まれたのだ。

2024-04-27T02:05:16Z dg43tfdfdgfd